ホスピスカー 米子の街を走る
- 米子の在宅医療・緩和ケア よだか診療所
- 2024年2月11日
- 読了時間: 3分
更新日:3月9日

みなさん、こんにちは。鳥取県米子市の在宅医、前角です。
今回は、当院が県内で初めて昨年認可を受けた 医師同乗の緊急走行車両(ホスピスカー) についてのお話です。
まだまだ馴染みの薄いホスピスカーですが、その存在意義、「救急医療にACPを持ち込む」ことの大切さについて、熱く語りたいと思います。
在宅医療と救急車両のつながり
「在宅医療」「緩和ケア」と「救急車両」。 この組み合わせに違和感を覚える方も多いかもしれません。
しかし、ホスピスカーは、まさに在宅医療の延長線上にある存在 なのです。
当院が独自にご案内しているこのシステムは、県内初の試みです。 患者さんやご家族からの相談を受け、往診の体制を整えるなかで、「苦痛を和らげる」「急激な体調の変化に即応する」ことが必要だと判断し、自分たちの手で社用車を改造して実現しました。
カーボディに「緊急往診車」のステッカーを貼り、パトランプをつけたこの車。 看護師が「パトラン、ちょっと歪んでますよ」なんて言いながら準備する光景は、私たちの日常の一コマになっています。


ドクターカーとの違い
緊急車両といえば、まず思い浮かぶのは救急車。そして、県内では三次救命救急センターの先生方が同乗する 「ドクターカー」 も知られています。
では、ホスピスカーは?
ある意味、これもドクターカーです。医師が必要な薬や処置具、検査道具を持ち、ご自宅で医療行為を開始する。目的は 「できるだけ早く、適切な対応を届けること」 。
しかし、大きな違いがあります。
ドクターカーは、「救命」「病院搬送」を前提に設計されています。
一方、ホスピスカーは「いかなる緊急事態においても、自宅での生活をどうやって守るか」を第一に考えている のです。


自宅での解決か、病院を目指すか
ホスピスカーは 在宅医療を受けている方のための緊急対応手段 です。
✅ かかりつけ患者さんの急変や苦痛の増悪時に特化
✅ 病院へ行かなくても解決できることがないかを優先的に考える
✅ 患者さんの意向やACP(アドバンス・ケア・プランニング)に基づいた判断をする
これは、決して「病院に行かない」ということではありません。
むしろ、「どうすれば自宅での生活を続けられるか」「搬送するにしても、最適な方法を選べるか」を 患者さんと家族、医療者が冷静に話し合える環境をつくること が、ホスピスカーの最大の役割なのです。
どんなときにホスピスカーが出動するのか?
✔ 「がんの末期で痛みが強くなった」 → 適切な薬剤調整や処置を行い、自宅での安楽な療養をサポート。
✔ 「呼吸が苦しくなった」 → 酸素投与や薬の調整で、搬送せずに済むよう対応。
✔ 「点滴が必要な脱水症状」 → 在宅での輸液対応。
✔ 「家族が救急車を呼ぶべきか悩んでいる」 → その場で判断し、ACPに沿った最適な対応を提案。
「救急車を呼ぶ」という選択肢が、すべての患者さんにとって最善とは限りません。
「どうすれば安心して家で過ごせるのか?」
それを一緒に考え、支えるのが 在宅医としての使命 であり、ホスピスカーの存在意義です。

まとめ
ホスピスカーが目指すのは、
1️⃣「救命」ではなく「その人らしい生活を守る」こと
2️⃣「病院へ行く」ではなく「自宅で解決できる方法を探す」こと
3️⃣「急変時の不安を和らげ、最後まで寄り添う」こと
患者さんとご家族が「どんなときでも安心して暮らせる」よう、これからも私たちは走り続けます。
米子の街を走るホスピスカーに、ぜひご注目ください。
そして、さまざまな立場の方々からのご意見をお待ちしています。
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