みなさんお元気ですか、鳥取県は米子市の在宅医、前角です。
今回は、当院が県内で初めて昨年認可を受けた医師同乗の緊急走行車両(通称ホスピスカー)について、のお話です。
まだまだ馴染みの薄いホスピスカーですが、その存在意義、「救急医療にACPを持ち込む」ことの大切さについて、熱く語りたいと思います。
「在宅医療」「緩和ケア」と「救急車両」の繋がりは分かりにくいものがあると思います。
ホスピスカーは、当院が独自にご案内している、県内初の試みです。
患者さんからの相談を受け、往診の体制を整えるにあたり、苦痛を和らげる、または急激な体調の変化にすぐ対応すべきと医師が判断した際に、社用車の仕様を自分たちの手で変更して、少しでも早く現場に向かいます。
カーボディに「緊急往診車」のステッカーを張り、パトランプをつけてくれるのは当院の看護師です。「パトランちょっと歪んでますよ」なんて言いながら向かいます。
― ドクターカーとの違い―
緊急車両でみなさんがなじみ深いものと言えば、真っ先に救急車だと思います。
県内では、三次救命救急センターの先生が同乗して現場に急行する
「ドクターカー」が浸透していることと思います。
ホスピスカーもある意味ドクターカーです。医師が必要なくすりや材料、検査の道具を持ちだし、ご自宅で医療行為を始めます。少しでも早く問題の解決を図る、そのために医師が現場に急行し、患者さんの回復を目指す点において、私も救急の先生も気持ちは一緒です。
では大きく異なるその成り立ちについて、大切なことは何か。なぜ在宅医が救急対応を担うのか。
それは「いかなる緊急事態においても 自宅での生活をどうやって守れるか」という価値観をつねに大切にしている、ということだと思います。
― 自宅での解決を試みるか ERやICUを目指すか ―
ホスピスカーは在宅医療を受けておられる方に向けて、予期せぬ事態において迅速な対応をご案内するものであり、かかりつけ患者さんの急変や苦痛増悪時にあくまでも特化し対応しています。
これは在宅医療の延長上にあるもので、本来は日常診療の中で患者さん達の健康を守り、増悪を予防し、予後を維持する必要があります。
その上で生じてしまった辛くて苦しい事態に、少しでも早く緩和や回復の手立てを届けるために、我々は緊張の中で緊急走行を選ぶのです。
それは、「どんな時でも自宅での生活を守り抜きたい 安心して地域で生活してほしい」という私たちの願いのかたちです。
皆さんの日常を見守る在宅医がまず現場に向かう、ということは、お待たせしてしまう苦痛があるにせよ、結局は救急車で病院へお送りすることになるにせよ、「今いる場所で解決できないか」という選択肢を交えた診療と話し合いが、すぐにしっかりとできることが非常に重要です。
在宅医がホスピスカーで走るとき。救急車を呼ぶ時。そこには必ずACPが存在します。
なぜ在宅医療を受けている患者さんが救急車を呼ぶことに慎重にならなければいけないか、何を望み、何を期待し救急車に乗るか。その問題に在宅医が対応することの大切さについても、また別の機会にお話したいと思います。
これからも米子の街を走るホスピスカーにご注目ください。
そして様々な立場の方々からのご意見をお待ちしています。
Commenti