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「ACP(Advance Care Planning)家族と共に考える、心の折れない選択」


夏至が終わり、本格的な夏が始まろうとしています。ご無沙汰しています。みなさんいかがお過ごしでしょうか。


今回は私たちから、在宅療養にまつわる重要なテーマについてお話しします。それは、「本人の心が折れてしまうのが辛くて告知をためらうご家族と一緒に、自宅で過ごす患者さんについてです。


「降っても散っても愉しく」をモットーに、私たちは数年間にわたり、このような患者さんと接してきました。


重病の病名や、将来的な予後の告知というのは、ご本人はもちろん、医療者にとっても家族にとっても、心に重くのしかかる問題です。


本人がショックを受けるところを見たくない」「これから先、生きる気力を失ってしまうから」という理由で、本人への告知を控えてほしいと仰るご家庭は少なくありません。


本人を思っての配慮に、みなさん自然なことと受け止めておられると思います。


しかしながら、病状の進行を伴うと、患者さん自身が病状を知らないまま容態が悪化していくのを目の当たりにするころ、ご家族は戸惑いを隠すことはできません。


先のことを思えば「今ならできること」を「もっと元気になったらいつか」と後回しにし、その楽しみがいつ実現するのかがどんどん難しくなることも大きな問題です。


しかし、何よりも心を痛めるのは、患者さんがいつか苦しむことになる時に、それを見守るご家族の辛さです。


私たちには、彼らの苦悩を代わって上げることが出来ません。患者さんのそばに寄り添い続けるのは、ご家族だからです。


それでもやはり、患者さんの心が折れてしまうことは怖いです。そんな気持ちに寄り添いたいとき、私たちが考える答えは何でしょうか。


私は、この問いについてもっともっと地域の皆さんと詳しく話し合いたいと思っています。それがACP(Advance Care Planning)です。


ACPとは、Advance Care Planningの略であり、医療介護の専門家と患者さんや家族が協力し合いながら、将来の医療に関する意思決定を行うプロセスです。


これは単なる医療の選択肢を話し合うだけではなく、患者さんの価値観や希望を尊重しながら、彼らが望む生活を送るための計画を立てるものです。


昨年の診療報酬改定で、在宅療養支援医療機関はACPの院内指針を立ち上げマニュアル化していること、という文言が施設基準に新たに追加されました。


ACPの目的は、患者さんの来し方、行く末、またその方が目指すもの、大切にしたいものを支える人々が理解し、療養の目標を立てるにあたって、「なぜ」それを尊重するのか、そしてそれを「どうやって」実現するのか、

を話し合い、その人の支えを誰もが担い、少しでも希望を叶えて上げることです。


辛い時にも何を希望に掲げ、どのように、どこで、誰と日々を送っていきたいかをみんなが知ることで、各職種がスキルや知識を患者さんのニーズに沿って発揮し、意見交換を通して様々な希望を叶えることができます。


これにより、患者さんは予後がままならない状況であっても、苦痛の緩和を期待しながら希望を持って生活を続けることができます。


また、ACPは家族や医療スタッフとのコミュニケーションを促進し、終末期のケアや治療方針に関する誤解や後悔を防ぐのにも役立ちます。


「みんなで話し合ったこと」

「本人の希望を最大限尊重したこと」


が反映されたケアは、何よりも最良の選択であったとみんなが納得することができるものだからです。


ACPは、医療介護のプロフェッショナルと患者さんや家族が協力して行うものです。


患者さんや家族は、愛する人の価値観や希望、信念について考え、多職種と共有することで、将来の状況についての選択肢やオプションを理解し、自分たちにとって少しでも悔いのない、

最善のケアを受けるための計画を立てることができます。


ACPは単なる医療の選択肢を話し合うだけではなく、人間らしさと尊厳を重視した医療を追求するための手段でもあります。結論を急ぐのではなく、「なぜ」それを望むのか(拒むのか)、「どうやって」それを実現させるのか、


その対話の過程を重視します。


生きる希望は、誰もが最後まで抱き続けることができるもの。患者さんが自分の希望に基づいて人生を送ることができるよう、在宅チームはその願いを尊重し、支援する役割を果たします。


私たちはACPを通じて、これから予側し得る転帰や予後をご本人と家族に示し、心身の準備を整え毎日を悔いのないものとして過ごして頂くよう提言します。


もちろん患者さんとご家族の心の負担を軽減し、安心して選択をすることができるようサポートすることが重要です。


辛さや迷い、悲しみも一緒に受け止め、「そうだね」という肯定を持って、あらゆる感情を受け止め、消化していくお手伝いをします。


患者さんやご家族の希望や価値観は、本当に様々。共有することで、在宅チームの各メンバーは最善のケアを提供し、個々の希望に合わせた選択肢を提案していきます。


心が折れてしまうような状況に直面した時、一緒に悩み受け止め、考えてくれる在宅チームと、ともに構築していくACPはどちらも本人とご家族を支える非常に貴重なツールです。


皆さんとともに、この重要な課題についてさらに議論を深め、心の折れない選択を追求していきたいと思います。


ACPは在宅の現場に課せられたただの義務ではなく、家族との絆や尊厳を尊重し、より良い人生を送るための一歩となることを忘れないでください。


我々は一人でも多くのみなさんと一緒に、ACPを通じて医療の未来を考え、最期まで心の折れない選択を見つけていくことを願っています。


ACPは、患者さんと家族が一緒になって生活を共に歩むことを促進できると信じています。


「自分たちの人生や絆を見つめなおす」行為そのものがACPなのかもしれません。


もちろん「独りぼっちのACP」だってあります。だけど誰しもが独りではありません。誰かを支える誰かが、どなたにも存在するからです。


誰もが自分らしい最期を迎える権利を持っています。そして、誰かとの絆や思い出を大切にしながら、自分の過ごしたい場所で穏やかに人生を全うすることができると信じています。


このブログでは、ACPについての理解を深め家族と共に考える素晴らしさ、そしてそのための告知の大切さを伝えることを目指しました。


「告知をしたくない・してほしくない」というACPだってあってもいいでしょう。すべてはあなたの提言から始まっていくからです。


心が折れてしまうような状況に直面した時、いつだってACPは希望と選択肢を提供し、本人のみならずご家族の辛さを和らげる手段となり得ます。


皆さんと共に考えることができるACP。独りひとりの声や願いを尊重していけるようこれからも取り組んでいきます。


皆さんもぜひ、ご家族やご友人、かかりつけの先生、訪問看護さん、ケアマネージャーさん、様々な人と話し合い、自分や大切な人の意思を尊重した人生の計画を立ててみてください。


心の折れない選択を見つけるために、みんなで一緒に歩いていきましょう。


これからも、皆さんと共に考え、ACPについての意識を高めていくために、さまざまな情報や体験を共有していきます。




                   

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