新緑の季節、人の命も輝きを増すかのようです。 私たちは毎日いろいろな場面に遭遇しながら奮闘しています。 今回はACPなんて大層なお話なのですが。 なんと言っても、これに尽きるのです。 「定命を全うしたい」 最近初めて目にした言葉です。定められた命。 私たちの定命はどこにあるのでしょうか。 「家にずっといたい」 どんなことがあっても―という前置きがある方もいます。 「もう死んでもええやな」と仰いながら、 血圧やコレステロールを気にしている人。お話していて心がほころびます。 生への執着が人を強くしてくれることがあるからです。 「もういいの」 助かるのに症状緩和にしか目がいかないのは惜しい。 生きる気力さえあれば、乗り越えられる病もあるかもしれないのに。 逆に生きがいのない延命は空しい。 誰のために生きていたいか、分かっている人は強い。 「死と向き合う」とか、「死にゆく人に寄り添う」とか、 そんな美辞麗句だけで在宅医療は語れないと思う。
そんなこと言ったら、生きてる人は全員死と向き合って、 いつか死にゆく自分に思いを馳せなきゃおかしい。
そんなことが出来る人達はごく限られている。 とても心の強い方達です。
その人達に賞賛や賛美、エールを送りつつも、
そうでない人を責めたり非難する気持ちにはなれません。

生きることは苦しい。 どんな病気だって、あなたの歩く力を奪ってしまうような病は辛い。 迷いに満ちていて、どうしようもできない身体があって。 伝わらない気持ちがあって、わだかまりもある。 だからって、死をそのまま受け入れられる人なんているかな。 みんな生きていたいし、少しでも一緒に居たい。 じゃあそれでいいじゃないか、それで行こうじゃないかと思う。 どうせいつか終わりは来るけども、 辛くなくて、愉しい思いが出来ればいい。 みんな生の真っただ中で、生きる力を精いっぱい輝かせて。 そうやって生にまみれて、 こんなにも命の交差点の真ん中で、狂ったように私たちは仕事している。
だから諦めないでほしいと思う。 あなたが大切にしているひとと、一緒に過ごす時間。
それが家であれと言うならそうすればいいし、そうじゃないどこかだとしたら、
送り出したり訪ねたりしていきたい。

こうやって私たちが狂ったように守っている1日1日が、 誰かにとってかけがえのない大切な日であればと思う。
もちろん大したことない、なんてことない1日も大歓迎。 青葉が茂るように、我々も生きる力を巡らせよう。 今ここにある私たちの平凡な毎日が、1年の中でもっともまぶしく 感じられるこの季節に。

Comments