2022年も4月が過ぎました。桜の季節があっという間に過ぎて、新緑が燃えるように
街を覆っています。
梅雨だ盆だ、ぼーっとしている場合ではありません。
なぜなら診療報酬が改定になったからです。
実は在支診の施設基準届出要件に、「ACP(アドバンス ケア プランニング)の院内指針をもうけること」という項目が追加となりました。
当院でも、改めて文書化や各媒体作りが整いました。
また遅くはないいつかの機会に、またみなさんに御覧にかけたいと思います。
そうです。
これはただの「算定要件のハードル」ではなくて、
「厚労省からのラブレター」として受け取ったわけです私は。
この機会を単なる「施設基準を満たすための枠組み」ということのみに留めず、
「患者さんやご家族 地域のスタッフの皆さんのために 自分たちなりに深め 日常化していく」ことをゴールにした指針にしました。
どうしてそう思ったかというと、
「ACPは難しいけどちゃんとやらないといけない」我々在宅医に課せられた日常の最大課題だと日々感じていたからです。
患者さんの意思決定支援については、厚労省が何年か前からお手本の「ガイドライン」を作成しています。
中身は非常にシンプルであり、特記すべきは「患者本人の意思に」というところー
「患者本人の」というフレーズの出現頻度。
臨床医学の現場では、患者さん、ひいては通院困難であったり、救急処置を必要とされる方々においては、
すでに意思決定能力が低下していることが少なくありません。
そのようなケースで「ご家族が希望されて」という枕詞のもと、様々な医療行為が展開されていることがまことに往々にしてある。
「そんなことないよ」って方がいたらぜひ教えてください。学ばせて頂きたい。
患者さんの意思を尊重するのがACP、いやはや、しかしそれがまた、現実では難しい。
それは意思決定責任のあるご家族の視点からの「患者本人に健やかであってほしい・長生きしてほしい」という思いとともに横たわる「ご家族たちのスピリチュアルペイン(魂の辛さ)」が、非常に非常に非常に大きいからです。
「本人さんの希望なので」という理由で家族の思いをないがしろにすれば、「とんでもねえ医者だ」と言われて信頼を失うだけです。
それではいけない。
他方、家族の希望におもねることは非常に簡単です。波風立たないから。
それに「否」と言ってると思うのです、今回の改定は。
「家族のいうこと聞いてればそれでいいんじゃないか」と悩んだこともありました。
けれども考えた結論は、
「もし私に主治医がいたら、私の権利や希望を声高に家族に説いてくれる医師であってほしい。私が物言えなくなっても、私の気持ちを代弁してくれる医師であってほしい」ということです。
そんな医者がいたら生きる勇気が湧きそう。そう思いませんか。
我々は患者さん本人のために活動しています。しかしそれがご家族を傷つけるものであってはいけない。
だが患者本人をないがしろにした医療はこれからはあってはならない。
そして「しんどいことはやだけど なるべく元気で楽しく生きてたい」という我々自身の欲張りのために、
医学の恩恵が答えるべきであるという大きな命題と。
この患者さん一人一人についてまわるこの非常に難解な、ウルトラCに立ち向かうために、在宅医は存在しているといっても過言ではない。
だからこの場を借りてわかっていただきたいのは、ACPというのは、
①難しいので時間がかかります
出会ってすぐに答えは見つからないし、診療を通して関係を築かせてもらいながら、少しずつ、そう3匹の子豚の末弟がレンガの家を建てるみたいに、
ACPは焦らず組み立てていきましょう。
②難しいので沢山の人数で考えます
「一人で決められないなんて優柔不断な医者だな」と思わないでください。何が答えなのかは、職種や事業所を超えて様々なスタッフで考えさせてください。
まさに時間と人手を要する作業、
森の中で落ち葉や生き物の亡骸を、分解者達が土壌の養分にしていくように、
ACPは様々な者たちの手によって静かな醸成を繰り返していく工程だと思っていただきたい。
そして様々な意思決定が下されていく暁には、大きな喜びを伴うはずです。
毎回ぷはーっと乾杯したい。私は下戸なのでノンアルコールで結構です。
レモン酎ハイにはまっています。
そういうわけで、私を見かけたら、
「堆肥作ってノンアルレモン酎ハイで乾杯する人だ」
と思って応援していただけるとうれしい。
よだか診療所 前角 衣美
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