喉元に上がってこないと熱くない|意思決定支援の話
- 米子の在宅医療・緩和ケア よだか診療所
- 2020年1月17日
- 読了時間: 2分
更新日:3月8日
今以上に悪くなることなんか、考えたくもないけれど
年明け早々、診療に追われる日々。ふと、考える——
「私たちは、今以上に悪くなることをすぐに想像できるだろうか?」
現状に不安や不満があれば、なおさらのこと。困ったことは、先延ばしにしたくなるのが人間の心理。
では、これが在宅医療の現場だったら?
たとえば「胃瘻や気管切開」の話
・ 「今はまだ食べられるからなぁ…」
・ 「その時になってみないと、わからないわ…」
難病を抱える患者さんやご家族の中には、こんなふうに迷う方も多い。
「そりゃそうですよ。」
分からないことだらけなのは、当然のこと。けれど——
「今はまだ大丈夫」でも、考えておくべきこと
もし「楽しく食べる時間を長く持ちたい」なら、「体力を維持して、なるべく元気に過ごしたい」なら、栄養はとても大切。
✔ 口から摂っている食事の量が、体格に見合わなくなってきたら?
✔ 栄養が足りなくなってきたら?
その時が、次の選択を考えるタイミングかもしれません。
人工的に栄養を補充することは、「自分の生命力を保つ」ということ。
けれど、それだけではない。本人の意思は、とても重い。体を傷つける選択をする中で、人生の終わり方まで考えなければならない人もいる。
だからこそ、迷う時間は必要で、ゆっくりとした時間の中で「自分はどうしたいか」を確認していくことが大切。
「愉しく生きる」ための選択をどう支えるか
・ 手術に踏み切るのか、踏み切らないのか。
・ 延命を優先するのか、それともQOL(生活の質)を優先するのか。
その答えは、一人ひとり異なります。
だからこそ、早めに選択肢を提示する。でも、決して「どっちにしますか?」と二者択一で聞くわけではない。
その人が大切にしているもの、私たちがまだ知らない、その人の人生の物語。それらを拾い集めながら、「未来に思いを馳せる時間」を作ることが大切なのです。
「自分の人生を、自分で決められる瞬間がある」
その決断を手伝うことができる人がいる。
喉元を通り過ぎる熱さに耐える勇気を、引き出すことが私たちの仕事。
「見る前に飛べ」と言った作家がいましたが、もし希望をもって前にジャンプできたら、私もうれしく思います。

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