CRPこの厄介な存在
「今日の白血球、4500です。CRPは0.1。心配ないね。」
医療機関では、こんな採血結果の説明が日常的に行われています。私自身、クリーンルーム時代(造血器疾患の治療などで無菌環境が必要な場)から、検査結果に一喜一憂する日々を送っていました。
病気や治療の影響で骨髄の白血球を造る能力が低下し、回復を待つ患者さんにとって、白血球やCRPの数値はまさに生命線となる。
しかし——在宅医療の現場では、感染症の診かたが変わるのです。
在宅医療での感染症管理|「数値」だけでは測れないこと
人が細菌に感染したとき、抗生剤は確かに有用です。しかし、それと同時に慎重に考えなければならないことがあります。
✔ 細菌叢(バクテリアのバランス)の変化 → 口腔・腸・膀胱・皮膚など、体には常在菌のバランスがある。
✔ 耐性菌の問題 → むやみに抗生剤を使うと、抗生剤が効かない菌が増える。
✔ 患者の体力の低下 → 在宅療養中の患者さんにとって、感染症は致命的になりうる。
特に在宅医療では、患者さんの免疫力や体力の低下が進んでいるケースが多く、「数値が正常だから安心」ではなく、日々の生活や症状の変化を総合的に診ることが重要になります。
「抵抗力を高める」ことが最大の予防策
感染症を防ぐために、何よりも大切なのは 「バクテリアへの抵抗力を高めること」「体力を維持すること」 です。
✔ 栄養状態を良好に保つ(十分な食事・水分補給)
✔ 適度な活動・リハビリを取り入れる(動ける範囲で体を動かす)
✔ 口腔ケアを徹底する(誤嚥性肺炎の予防)
✔ 適切な衛生管理を行う(手洗い・清潔な生活環境)
そして、抗生剤の適正使用を意識することが、患者さんの未来を守ることにつながります。
「数値が正常」なら問題なし?在宅医療で大切な視点
熱がなければ、白血球が増えていなければ、CRPが高くなければ。
それだけで、「問題なし」と判断してしまっていいのでしょうか?
感染症は、数値だけでは測れないことが多い。在宅医療の現場では、患者さんの「日常の過ごし方」や「ちょっとした体調の変化」にこそ、感染の兆しが隠れていることがあります。
私たちは、日々の診療を通して、「患者さんの普段の状態」 を知ることができます。だからこそ、検査結果だけに頼るのではなく、患者さんの生活全体を見つめることが必要なのです。
まとめ|在宅医療における感染症管理のポイント
・ 検査結果(CRPや白血球数)だけで安心しない
・ 耐性菌や細菌叢のバランスを考え、安易な抗生剤使用を避ける
・ 日頃から「バクテリアへの抵抗力」を高める生活習慣を整える
・ 患者さんの普段の状態をしっかり観察し、小さな変化を見逃さない
在宅医療での感染症管理、もっと知りたい方へ
患者さんの日々の過ごし方、その大切さについては、また少しずつお話ししていきたいと思います。
ご不明な点やご意見があれば、ぜひ当院までお問い合わせください。感染症とどう向き合うか、一緒に考えていきましょう。

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